Sweet Love
「そろそろ入るか」

「はい」



 大量のフードとドリンクを、抱え込めないほど両手に持ちながら、あたし達はエントランスへと向かった。



「えっと、シアター4、シアター4…」



 誠二先輩はぶつぶつと呟く。あたしはその後を黙ってついて行った。


 どこに行ってもポップコーンの匂いが充満に広がる中、あたし達はシアター4の表記をやっと見つける。


 中程まで足を進めると、大きな白いスクリーンが目に入った。スクリーンには、盗撮は犯罪ですと注意事項を説明した動画が流れている最中だった。


 指定席に体を預けると、誠二先輩はまだ映画が始まっていないというのにも関わらず、チュロスに齧り付く。


 それを黙って隣から眺めていると、不意に目が合った。



「食べる?」

「…いいえ。ポップコーン食べるので大丈夫です」



 笑顔でお断りし、ポップコーンを膝の上で抱きかかえながら、映画は始まった。



***



「すいません、本当に…」

「別にいいよ」



 笑顔でそう言うと、誠二先輩は最後の一口分のご飯――海鮮丼をパクリと口の中に放り込んだ。


 先ほどの映画館で、洋画のSF映画を見ていたときのことだ。


 しばらく字幕に集中していると、途中で急な睡魔があたしを襲った。誠二先輩から聞いた話によると、鑑賞中、映画がフィナーレを終える頃までずっとあたしは眠っていたらしい。


 
『裕子さんかなり熟睡してたからさ。こっちは集中してたし、起こすのも悪いかと思ってそのままにしておいたんだよね』



 …先輩、起こしてくれれば良かったのに。

 寝ちゃうなんて、あたしのバカ、バカ、バカ。



「あー、お腹いっぱいになった」



 お腹をぐるぐると手で摩っている先輩は本当に苦しそうだった。
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