Sweet Love
「その…さっき職員室の帰りに、その子とぶつかっちゃって。その子泣いてて…」

「…見たんだ」

「…うん。勝手に見てごめんね。…もしかして振ったの?」

「うん、断ったよ」

「どうして? …あんなに可愛い子なのに…」



「急に知らない子に告白されても困るから」と、萩原くんは無表情で答える。表情がなくてもどこか威圧感があった。



「そ、そうかも知れないけど…」



 わたしは怖くなって目を伏せた。



「それに、まだ入学してから日にち浅いのに、すぐに人と付き合うっていうのは抵抗あるし」

「……これから知っていけばいいじゃない。あの子、可哀想だよ。きっと、すっごく勇気を振り絞って萩原くんに今日告白したんだと思う」

「なんなの。……何でそんなの、石田に言われなくちゃならないの? そんなにその人と付き合って欲しいわけ?」

「別にそういうんじゃなくて…。ていうか決めるのは萩原くんだから…」

「……」

「今もまだ学校で泣いているかも知れない。まだ学校から離れていないし、少しでも萩原くんの気持ちがあるなら、行ってあげたらどうかな。……少なくともあの子は中途半端な気持ちで告白したわけじゃないと思う」



 わたし、何でこんなに熱心に説得しているんだろう…。


 部外者で関係のないわたしが、どうしてここまで口を出すのだろう。



「いや、わかるけど…」



 ……だって、あの子の気持ちが、なんとなくだけどわたしにはわかるんだもん。



「それにその場で切り捨てちゃうことはなかったんじゃないかな…。考えさせて欲しいだとか、まずは友達からだとか、色々あったと思うの。なのに…」

「それは、」
「その子の気持ちを簡単にへし折るなんて、可哀想だよ。その子の気持ちもちゃんと考えてあげなよ…」



 わたしは萩原くんの声に覆い被さるように続けた。
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