Sweet Love
 ――もうダメかも…。



「麗美、ごめ…ん、やっぱり、あたし自分のペースで走るよ。だから先に走って……っ」

「ん、わかった! あまり無理しないでね?」

「……っ、うんっ!」



 あたしはそう言って走るスピードを緩めた。麗美はすぐにあたしを追い越して行く。


 麗美のその走り姿はとても軽やかで、あたしは麗美に感心しながらも頑張って走り続けた。


 次第に、前方にいた麗美の姿が小さくなっていく。


 クラスの男子もやっとスタートしたのか、ちらほらと何人かあたしの横を走り抜けて行った。


 しばらく走っていると、逆方向からすれ違った麗美に「頑張って!」と声を掛けられたので、あたしは笑顔で手を振り返した。


 折り返し地点に差し掛かった頃、もうあたしの足は限界だった。


 ふくらはぎの痛みに顔を顰めながら、ふらふらと走るあたし。


 おまけにあまりの暑さであたしの体力をどんどん奪っていく。



 ――足が重い…。



「あっ」



 視界がぐにゃりと揺れ、何もない所で躓いて転んでしまう。



「…いったあ」



 どうやら膝が擦りむいてしまったらしく、じっと見ていると、両膝からじわじわと血が滲み出てきた。



「どうしよう…」



 血が出ているのを見ると、痛みが増すから不思議である。



 ――なんか手も痛いし。

 先に膝を付いて、確かそのあと、手も付いたからもしかして…。



 手の平を広げて見ると、案の定、皮が所々剥けていてそこから出血していた。


 立てなくて動けずにいると、後ろから「おーい!!」と男子の叫び声が聞こえてきて、あたしはすぐさま振り返った。
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