Sweet Love
 振り返ると、牧原と萩原が一緒に走っていた。


 呆然としながら黙って見ていると、二人ともこちらへ向かって来てるようだった。



「……」



 あたしの怪我の具合を見た牧原は、目を見開きながら言った。



「お、おい、大丈夫かよ」

「松田、…血出てる。牧原。お前学校まで連れてってやったら?」

「え、でも…あたし」



 萩原ってば、…何言ってるんだ。



「わかった」



 …え、わかったって、今あたし達、喧嘩中なんだけど。



「俺、このまま集合場所まで走って、先生に言っておくから」

「ああ。頼んだ」



 …勝手に二人で話し進めないでよ…。



 萩原はそのまま走って行ってしまい、あたしと牧原だけがその場所に取り残された。


 牧原は両膝に手を付いて屈んだまま、こちらの怪我をじっと見つめながら言った。



「…それにしても、すごい大胆に転んだな。お前」

「走ってたら、だんだん疲れてきちゃって、いつの間にか転んじゃった」



 なんだか気まずいと思いながらもエヘッと笑顔を作り、牧原の顔色を窺っていると、牧原は無表情のまま大きく溜め息を吐いた。



「バカ」



 …バカとはなんだ、バカとは。



 痛みで言い返す気力もなくて黙っていると、牧原がくるりと回り、こちらに背中を向けてしゃがみ込んだ。


 牧原は、後ろに向かって手を差し出す。



「ん」



  …これってもしかして。



「い、いいよ、大丈夫だから」
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