Sweet Love
 学校の近くの交差点に入ると、漸く見覚えのあるあのいつもの坂道に入った。


 大型トラックがあたし達の横を走り去ったとき、牧原とあたしの髪を靡かせ乱していく。


 太陽の光は先ほどと変わらず、あたし達を熱く照らし続けていた。



「牧原、ありがとう。もういいよ。降りる」

「ん」



 ストン、と足を地面に着地させ、牧原の横に付いたあたしは一緒に学校へ戻って行く。


 学校に到着した頃には、もうすっかり昼休みの時間になっていた。



「うわ、もう昼休み…」

「あれだけゆっくり歩いてたんだ。これくらいの時間にはなるだろ」



 教室には戻らずに、牧原と真っ直ぐ保健室へ向かう。


 保健室のドアをノックして中に足を踏み入れると、あゆみ先生の姿がどこにも無かった。



「居ないじゃん。あゆみ先生」

「どっかで昼飯でも食ってるんじゃない」



 牧原は勝手に棚から救急箱を持ち出し、それを中央にあるテーブルの上に置いた。



「いいの? 勝手に出しちゃって」

「居ないんだから、しょうがないだろ。待ってたら休み時間なくなるって」



 そう言って牧原は丸椅子を奥から引いて、あたしの前までずいっと移動させてきた。



「座ってくれない? 消毒するから」

「あ、うん」



 牧原に言われ、素直にあたしは丸椅子にちょこんと座った。


 牧原は救急箱からガーゼと消毒液を取り出し、あたしの前で片膝を付いてしゃがむ。



「ちょっと痛いかも知れないけど、耐えて」

「う、うん」



 あたしは頷きながらも顔を強張らせ、全身に有りっ丈の力を入れた。
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