Sweet Love
 このままだと、わたしが泣いてしまいそうだった。どうして泣きそうになるのかはわからない。


 どういう種類のものなのかわからない混沌とした感情が胸を掻き乱す。そんな痛みが、急激にわたしの胸を締め付けた。



「……わかった。石田がそこまで言うなら様子見に行くよ」

「うん。早く行ってあげた方がいいよ」



 わたしは顔を見られないよう反対側に体を背けた。



「頑張ってね。わたし、…結果がどうであっても応援しているから」



 少しの沈黙のあと、萩原くんは言った。



「……じゃあ、明日」

「うん、また明日」



 萩原くんはそのまま学校の方角へと駆け出す。彼の足音が少しずつ遠退いていく。



 ――萩原くん、お願い。

 やっぱり行かないで。



 自分で言った癖に、わたしはもう後悔の気持ちでいっぱいになっていた。その場から動ける気力も出なくて、溜まっていた涙がどんどん溢れ出た。



 そのとき、わたしは気付いた。この苦しい感情の正体がどういうものなのか。



 これって、一目惚れなのだろうか。



 いつの間にか、わたしは――。









 萩原くんを好きなんだってことに、気付いた。
< 18 / 199 >

この作品をシェア

pagetop