Sweet Love
 牧原って、長距離マラソン得意なのかな…。



 チラリと横に視線を投げる。


 親身になって教えてくれた牧原が、今は何だか、いつもよりも頼もしく見えた。



「牧原、ありがとう」



 笑い掛けながらそう言うと、牧原も笑顔を返す。



「本番、頑張れよ」



 再び前を向いて一緒に走っていく。


 一瞬ドキっとして、胸を手で押さえる。



 何だ今の。

 またドキってした。



 それからもあたし達は一緒に走り、いつの間にかあたしは時間通りにゴールまで完走していた。



***



 クラスのみんなと集団になって学校へと帰っている中、あたしは牧原と話しながら歩いていた。



「牧原。聞いたんだけど、麗美と図書部やるんだって?」

「うん、やるよ。何か部活やらないと、高校生活損してる感じがしてさ。それなら好きなことにとことん没頭した方がいいだろ? 松田も何かやれば」

「あたしは、授業についてくのがやっとだもん。ずっと帰宅部でいいよ」



 それに、得意なことなんてどうせないし。

 おまけに運動音痴だし…。



「俺が図書部に入ったら、一緒に帰ることあまりなくなるね」



 確かに牧原といつも一緒に帰ってた。部活始まったらもしかしたら寂しくなったりするのかな、やっぱ。



「…うん。でも、あたし邪魔しに行くかも」



 牧原は訝しげな表情を浮かべながらあたしを見た。



「...何で?」

「だって、牧原と麗美が二人きりになんてなったら心配だもん。あんた、いつか麗美に手出しそうだしっ」



  牧原は溜め息を大きく吐いて、あたしの頭をポンっと軽めに叩いてきた。



「…バカ。絶対それはない。萩原に殺されるよ、俺」
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