Sweet Love
 そのとき、耳元で声がした。



「俺がなしたって?」

「うわっ!」
「うわっ!」



 あたしと牧原の声が、やたらと大きく被さる。


 後ろから突然萩原の声が降り掛かり、あたし達は驚きのあまり、肩を震わせた。



「は、萩原、驚かせるなよ、まったく」



 牧原の声が変に上擦っている。萩原の隣にはもちろんのこと麗美がいて、二人ともニヤニヤしながらあたし達を見ていた。



「で、俺が何だよ」



 あたし達はなんとか必死に誤魔化し続け、そうしているうちに、やがて学校へと辿り着いていた。



***



 西日の眩しさに顔を顰めながら、あたしと牧原は放課後の図書室にいた。



「わたし、先輩のこと、好きです」

「…ダメダメ。棒読みすぎ。全っ然気持ち伝わってこない」

「はあー」



 だって、牧原が相手じゃこっちも本気で告白の練習できないじゃん…。



「これで何回目だっけ」

「いちいち数えてないよ、そんなの。でも、一〇回以上はしてる、かも…」



 閲覧用の椅子に向かい合って座りながら、あたしは今牧原と二人で先輩に告白するときのシミュレーションを実際に行っていた。



「んじゃあ、もう一回」

「もう無理だよ。だって牧原だもん」

「いいから。やってみ?」
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