Sweet Love
 牧原は時々、変なところで積極的になる。そして今日はいつもより、ほんっとにしつこい。


 元はと言えば、「俺を先輩だと思って試しに告白してみて」って半分冗談で笑いながら言い出したのは牧原からだ。一体、何を考えているのやら…。



「もう無理だよ。牧原がもうちょっと先輩っぽくなってくれればいいのに」

「その先輩っぽくがよくわかんないんだけど」



 牧原は肩を竦めて、背もたれに寄り掛かった。


 どうも牧原が相手だと上手く告白できない。


 何度か自分の中で先輩を意識するようにイメージして告白しても、結局牧原にダメ打ちされてしまう。どんなに言い方を変えてみても、あたしはどうも棒読みになってしまうらしい。


 しかもこっちは真面目に告白しているのに、牧原は声を上げて笑うのだ。絶対コイツ、面白がってるな。



「じゃあ、もう一回」

「え、また?」



 ――一体何度告白やらせれば気が済むわけ…?



「露骨に嫌そうな顔するなって。最後だから。これで」

「……」



 牧原は閲覧机の上に片手で頬杖をついた。顔を斜めに傾けたまま、あたしをじっと見てくる。


 さっきまであれだけ笑っていたのに、急に無表情で真剣な眼差しに変わっていく牧原。


 何様なんだコイツ、と思いながらもあたしは困惑していた。
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