Sweet Love
「やっぱりやめる?」

「…いや。じゃあこれで最後だからね」

「うん」



 こうなったら、牧原を落とせるような告白してやる。



 あたしは俯きながら、ゆっくりと口を開いた。



「わたし、先輩が、…好きなんです。」



 今度は、ちゃんと感情を込めて言えたと、…思う。


 恐る恐る顔を上げようとしたとき、ガタッ、と椅子の音が鳴った。


 音が鳴ったと同時に顔を上げる。牧原は椅子から立ち上がっており、あたしの方へと一歩足を踏み出していた。



 ――何故、そこで立ち上がった。



「なしたの、牧原」



 真剣な眼差しでこちらを見つめる牧原。あたしの両肩に牧原の手が添えられた。



「牧原?」



 経験のないただならぬ空気を感じ、あたしの身体は一気に凍りつく。


 肩にあった手がするりと背中に滑り込んできて、牧原は突然あたしを抱き寄せた。


 あたしは目を見開く。



 …何これ。

 牧原ってば、先輩になりきってるつもり?



「牧原、ちょっとなりきりすぎ」

「なりきってなんかないよ」



 手で突き飛ばそうとしても、牧原の腕の中から逃れられない。



「牧原、痛い。…いい加減放して。ふざけるのも程々にしてよ」

「イヤだ。ふざけてなんかないし」

「は?」



 あたしは牧原の腕の中で暴れるのを、一旦停止させた。



「……どういう、意味よ」
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