Sweet Love
 抱き寄せられた状態で、牧原のもう一方の手があたしの肩の上に置かれる。頭が混乱した。


 見上げると、牧原と視線がぶつかった。


 顔の近さにびっくりしていると、牧原に顎を掴まれ、不意打ちにキスされた。


 一瞬の出来事に目が点になる。



「…ごめん、松田」



 え? 何今の…。

 今何が、起こったの?



 あたしは牧原の目を見つめ返す。



「何してくれてんのよっ、あんた」



 牧原にされたことを少しずつ理解し、我に返る。あたしは牧原を思いきり手で突き飛ばした。


 さっきはあんなに力強かったのに、今度は簡単に抜け出すことができた。


 一連の出来事に、羞恥と怒りが湧き起こる。自分の顔は今、真っ赤になってるに違いない。



「あんたって、…本当にサイテーだね」



 あたしは涙目になりながら、牧原を睨んだ。


 図書室を出ようと足を踏み出すと牧原があたしの腕を掴む。



「松田…」



 振り返ると、牧原が熱っぽい視線でこちらを見つめていた。



「は、放して。あんたなんか、…あんたなんか大っ嫌い!」



 断固拒否するように腕を振ると、弱々しい牧原の腕はまたしても簡単に振り解くことができた。


 あたしは逃げるように駆け出し、振り向かずに図書室から脱出した。


 牧原が追い掛けてくることはなかった。
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