Sweet Love
「今日もうち来るだろ?」

「うん、行く行く。あ、…あれって」



 こちらに気付いた彼が、あたしに向かって指を差す。一方、隣のもう一人の彼は前を向き、あたしに焦点を合わせた。



「…あ。裕子さん?」



 階段から下りてきたのは誠二先輩と優希先輩だった。



「お、お疲れさまです…」

「そんなところで何してるの?」



 優希先輩が笑顔で訊いてくる。



「い、いいえ、何も。あのよかったら…途中までわたしも一緒に帰って、…いいですか?」



 …ヤバい。

 急がないと牧原来ちゃう。



 さっさと一人で帰ってしまえばいいものを一緒に帰るチャンスだと思ったあたしは、そう言わずにはいられなかった。



「僕は構わないよ」



 そう言って優希先輩はちらりと誠二先輩に目を向ける。



「俺も、…別に構わない」



 …出た。

 “構わない”のちょっとだけ古くさい言い回し。



「じゃあわたし、靴履き変えて来ますんで」



 玄関で別れ、出入り口に再び集合したあたし達は共に校舎を出た。


 いつもの坂を下りながら、誠二先輩が口を開く。



「裕子さんっていつも地下鉄だよね?」

「…はい…?」

「今日、俺が夕飯当番なんだけどうちでご飯みんなで食べる? こいつも食べに来るんだ」

「僕も行くんだよ。お家の都合よかったら一緒にご飯食べようよ。麗美ちゃんもいるだろうし」

「いいんですか?」

「いいよ。裕子さんがよければ」



 つい顔が締まらない顔になって頬が緩む。



  ヤダ。先輩から誘ってくれるなんて夢にも思わないじゃない。



 断る理由なんてあるわけない。



「じゃあ行きます!」



 あたしはとびきりの笑顔を返して言った。
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