Sweet Love
「お邪魔します」



 先陣を切る先輩方の後に続いて、あたしはそっと玄関に足を踏み入れた。



「これ、使って」



 可愛らしいブタの顔がつま先についているなんともユニークなスリッパを用意され、あたしは思わず笑ってしまう。



「ぶ、ブタ…。何でブタなんですか、これ」



 誠二先輩はふっと鼻で笑って言った。



「母さんの趣味。ちょっと変わってるんだ」

「そ、そうなんですか…」



 そのあとリビングに案内され、優希先輩とあたしは共にソファーに腰を下ろした。



「あの、麗美はまだ帰って来てないんですか?」



 誠二先輩はブレザーを脱ぎ、ダイニングテーブルの椅子の背もたれにそれを掛けた。



「うん、まだ。さっきメール送ったからすぐ帰ってくると思う」

「そうですか」

「ちょっとお茶淹れるから、テレビでも見てて」

「はい」



 そう言って誠二先輩はキッチンに入って行った。


 優希先輩はリモコンを手に持ち、テレビを点ける。


 夕方ということもあり、チャンネルを変えてもニュース番組しかやっていなかった。優希先輩は諦めて、チャンネルを変えずそのままにしてニュースが流れた。



「裕子ちゃんってさ」



 突然優希先輩に話し掛けられ、あたしは驚く。



「は、はい」

「誠二のこと、好きなの?」



 彼は笑いながらあたしの耳元に手を添え、小さな声で耳打ちしてきた。



 優希先輩にはお見通しだったんだ…。



 突然そんなことを言われ、動揺を上手に隠すことができず、頬に熱が帯びる。



「す、好き、です…」



 あたしはそっと小さな声で絞り出した。



「そっか。頑張って、ね?」



 そう言った優希先輩の視線はあたしの背後に向いていた。視線の先が気になって、あたしは後ろに振り返る。



「…あ」



 お茶が載ったお盆を手に、誠二先輩がムスっとした顔で立っていた。
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