Sweet Love
「…最近、裕子元気ないよね。萩原くんと今日話してたんだけど、なんか前より勢いがないというか…。裕子何かあったの?」

「え?」

「ほ、ほら。前はガツガツしてたじゃない」



 …ガツガツって。

 あたしそんなに弱々しく見えてたのかな。



「もしかして牧原くんと何かあった?」



 牧原の名前を出され、一瞬ギクリとした。あたしは、取り乱さないよう平静を装って口を開く。



「…いや。何かあったってわけじゃ、ないよ。ていうか今日も学校で普通だったじゃない」



 牧原にキスされた、だなんて口が滑っても言えない。


 それに、今の牧原との関係はあくまでも二人の秘密だ。麗美と萩原は繋がってるし、萩原が絡んでしまうと、とても面倒なことになる。



「…確かに、いつも通りだったけど。で、でも…」



 麗美はまだ何か言いたそうだった。



「気にしすぎ、麗美。あたしは大丈夫。況してや牧原のことで悩むわけないでしょ、このあたしが。悩むのは誠二先輩だけなんだからっ」



 あたしは麗美の背中を力強くバシっと叩いた。



「…もう。相変わらず痛いってば、裕子」

「あ、ごめん」



 顔を合わせ、あたし達は笑い合った。


 その夜、麗美と誠二先輩と優希先輩に駅まで送ってもらい、あたしは家に帰宅した。


 すっかり母に連絡しておくのを忘れてしまっていたあたしは、帰宅後こっぴどく叱られたのは言うまでもない。
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