Sweet Love
 麗美はこんなあたしを見て苦笑いしている。



「裕子、それ、男子が言う言葉みたい…」

「…いーの」

「ところで牧原くんは知ってるの? 裕子が今日、告白すること」

「知らないよ。まだ言ってないもん。麗美にしかまだ話してない」

「…そうなんだ」



 麗美は少し嬉しそうに俯いて、微笑んだ。



「ていうか、牧原には結果わかったらちゃんと言う」

「…そっか。頑張って、裕子」



 麗美は小さく両手でガッツポーズをする。



「ありがとう」



 そのあとも、麗美との雑談はしばらく続き、あっという間にお昼休みの終わりを告げる鐘の音が響いた。



***



 その日の午後は、そわそわと落ち着かなかった。


 授業中ノートは取っていたけれど、誠二先輩のことばかり考えていて、全然集中できていなかったと思う。どう告白しようか悩んでいるうちに、気付いたら帰りのホームルームの時間になっていた。


 ホームルームが終わったあと、あたしはすぐに携帯を開き、誠二先輩にメールを送った。


『一緒に帰りませんか?』とシンプルに。


 五分ほど経つと、その返信はすぐにきた。



『いいよ。ちょっと用があるから教室で待ってて』



『わかりました。待ってます』と簡単に返信をしたあたしは、携帯をブレザーのポケットに入れる。


 一方、牧原と麗美はホームルームが終わってから忙しなくバタバタとしていた。



「あんた達、もう行くの?」

「すぐ始まるらしいからもう行くよ」

「うん。じゃあ行ってくるね。あ、萩原くん、あとでね」

「ん。教室で待ってる」



 萩原は、麗美にひらひらと手を振った。麗美は萩原に向かって小さく微笑みながら手を振り返す。その些細なやり取りに見入っていたあたしは、つい表情を緩ませた。


 それから筆記用具とメモを手に持った二人は、慌てて教室を出て行った。
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