Sweet Love
 その場にしゃがみ込んだわたしは、裏返ってしまったお弁当を慌てて表に返した。


 すると、当然中身のおかずも見事にひっくり返ってしまっている。


 仕方なく素手で散らばってしまったおかずを掻き集め、お弁当の中に戻す作業を続けた。



 ……うわー、手ベタベタする。



「あたしも手伝う」

「俺も」



 裕子と牧原くんはベンチから立ち上がって、わたしの元に駆け寄って来てくれた。



「二人ともありがとう」

「じゃあ、俺は購買で何か買ってくるよ」



 萩原くんの声に反応したわたしは、顔を上げた。



「……え。い、いいよ! わたしこれ片付けたら自分で買ってくるから大丈夫だよ?」

「後片付けのあとじゃ、絶対昼休みの時間無くなっちゃうだろ」

「でも、そしたら萩原くんだって、まだそんなにお弁当手つけてないのに…」



 そう。まだ来たばかりで数分も経っていないのに、わたしのせいで萩原くんのお昼の時間を奪ってしまうのはどうにも気が引けてしまう。



「俺は食べるの早いから大丈夫」



 二カッと歯を出して笑った萩原くんは、親指を立てながら言った。



「でも……」

「いいから。片付け終わったら手洗ってここで待ってなよ」

「……何か、ごめんね」



 本当に申し訳ないとわたしは思っていたのだが、ここは素直に萩原くんに甘えることにした。



「別にいいよ。…なんでも食べれる?」

「うん。なんでも大丈夫」

「わかった。じゃ、待ってて」



 萩原くんはそう言うと、走って屋上を出て行った。
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