Sweet Love
 お弁当の中身をやっとのこと拾い終えたあと、わたしは萩原くんに先ほど言われた通り手を洗いに行き、屋上のベンチで裕子達と萩原くんを待っていた。


 途中、お弁当を食べていた裕子は、わたしに話し掛ける。



「ねえ、麗美」

「ん?」

「よかったじゃん。萩原が何か買ってきてくれるって言ってくれてさ。――萩原って、優しいとこあるんじゃん」



 裕子は、ウインナーを箸で掴み取りながら言った。



「…うん」



 確かに萩原くんは優しい。


 あのときも…同じ日直だったときに日誌を手伝ってくれたり、そのあとも、黙って帰ることなくわたしを待っていてくれた日もあった。


 萩原くんが、優しいのは知っている。



「あ、麗美が超、顔赤くなってる」

「えっ…」



 牧原くんは「おっ」、と言って目を丸くさせた。



「そう言えばさ、ちょっと前にうちらが見かけた告白…ほらっ、萩原に告ってた朱菜ちゃん。あの二人付き合い始めちゃったみたいだよね」



 裕子は、面白そうに笑いながらそう言う。



「…うん」



 わたしの心が、どんよりと深い悲しみに塗り潰されていく。


 ……裕子も気付いてたんだ。



「おっ、告白の場面見たの?」



 牧原くんは目を輝かせた。



「見たって言うか、たまたま二階の窓からだよ。声は全然聞き取れなかったんだけど、すーぐ状況はわかったよ。ね、麗美?」



 わたしは、こくりと小さく頷く。



「へえー。萩原ってモテモテなんだね。まあ、顔立ちはいいからなあ。モテるわけだ」



 牧原くんは宙を見つめながら完全にニヤけている。



「でもさあ~、何か引っ掛かるんだよね。二人とも付き合ってるのに学校入っちゃうと何っかあんまり一緒にいるとこ見たことないしさ。何でだろうねえ。……あたしがさ、二人が付き合ってるって噂で聞かなかったら多分未だに気付いてなかったよ、きっと」
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