Sweet Love
***



 その日は当番のため、わたしは教室掃除を行っていた。


 わたしは箒で埃を一定の場所へ丁寧に集めていく。箒を片手に持ちながら、わたしはぼんやりと考え事をしていた。考え事とはもちろん、先ほど裕子が発言したことだ。


 裕子はあんなこと言っていたけれど、本気で萩原くん達の後をつけるつもりなのだろうか。


 わたしは裕子の提案にあまり気乗りがしなかった。後をつけるというのもどうかと思うし、何より、二人の普段の関係というものを探るのが特別嫌だった。



「ちょーっと、麗美! なあにぼーっと突っ立ってるのっ。急がないと早く帰れないでしょーが!」



 唐突に声を掛けられ、わたしは思わず飛び上がった。



「ご、ごめん」



 わたしは急いでちりとりの蓋を開け、手早くゴミを移していく。萩原くんは口笛を吹きながら、ゴミ箱を片手に持って、こちらへ近付いて来た。



「…ん。ゴミ入れて」

「うん」



 ちりとりの蓋をもう一度開けてゴミ箱に入れる瞬間、埃が空気中に舞う。わたしはすぐに顔を横に背け、目と口を閉じた。



「んじゃあ、ゴミ捨ててくる」

「うん、よろしくね」



 萩原くんはゴミ箱を持って、教室を出て行った。


 これであとは、みんなの机を元に戻すだけだ。



「掃除用具、片すねー」



 わたしは、もう一人のクラスメイトの女の子に箒とちりとりを手渡す。



「ありがとう。じゃあわたし、机戻すね」



 裕子とわたしで、机を一脚一脚動かし、元の場所へと戻していく作業を行う。わたしと裕子は汗だくになりながら、喋ることもできないくらい息を切らせていた。
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