Sweet Love
 拗ねて膨れていたわたしは、それでも急がなければとトーストを慌てて口に頬張る。



「よくそんなでかい口開けれるよな。相撲取りみたい」

「兄ちゃんっ!」



 兄ちゃん、わたしのことバカにしすぎだし…。


 苛立ちながらも、思考は違うことに向いていた。今朝夢を見たのだと思い出したところまではよかったのだが、内容が今ひとつ出てこない。



 ――どんな夢だったんだっけ…。



 しばらく頭の中で記憶を辿ってみたけれど、結局内容はひとつも思い出すことができなかった。



***



「麗美、ちゃんと準備した?」

「うん、大丈夫。お母さん、流石にもう出ないと間に合わないかも…」



「じゃあ行きますか」と言う兄ちゃんの一言でわたし達三人は家を出た。


 春になったばかりではあるけれど、外はまだ冬の残った空気のように冷たくてひんやりしていた。


 それでも今日は良いお天気だった。日なたを歩けばポカポカ陽気に恵まれて春らしさを感じることができる。


 わたし達三人はバスと地下鉄を利用して高校へと向かった。明日からはバス一本で通学することになる。今日は時間が無いから特別だ。


 学校へ続く坂道に入ると、新入生であろう学生達と保護者達の数が多く目に入るようになった。



 いよいよ入学式が始まる。



 わたしの高校生活が始まる。



 ここからがわたしの新たなスタートだ。
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