Sweet Love
「そんなに上手くいくかな…」

「考えてみなよ、麗美。学校出てバス乗るにしたってさ、しばらくバス停までは距離あるし、それに一本道の坂だよ? すぐに追い付くし絶対バレないって」



 そんな簡単に上手くいくとは思えない。三人で移動するとなると、ちょっと目立つのではないかと思う。それに、一本道となればいつ振り返られてもおかしくない。隠れるところは電信柱か駐車している車の陰ぐらいしか思い付かないけど、危うくなったとき、瞬時に三人同時で移動できるとは思えない。


 ――本当に大丈夫なのかな…。

 できれば参加なんてしたくないんだけど…。



 わたしは少しの不安と疑問を抱えながら、嫌々仕方なく二人の後をついて行った。


 玄関に辿り着いてから、わたし達は自分達のクラスの下駄箱に向かった。スチール製でできた下駄箱が列になって、いくつも並んでいる。


 クラスの下駄箱の前に立つと、裕子は「はぎはら、はーぎはら」と呟きながら、萩原くんの下駄箱を探し始めた。



「萩原はここだよー」



 少し得意気な顔で、牧原くんが萩原くんの下駄箱を指差す。



「あ、ほんとだ」



 裕子は、萩原くんの下駄箱を開けた。そして中を覗き、上靴が残っているかどうか確認する。



「まだ…いるみたい」

「じゃあとりあえず隠れるか」



 牧原くんはそう言うと、今いる位置からふたつ離れた職員用のロッカーへと歩き出した。



「麗美も早く!」



 裕子がわたしに、早くおいでと手招きをする。わたしは急いで二人の元へ駆け寄った。



「いい? 静かにね」



 萩原くんと朱菜ちゃんがやって来るまで、わたし達はそのまま身を潜めながらじっと待った。
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