Sweet Love
 でもそしたら、朱菜ちゃんは?

 …どうしてこっちに居たのかな。



「朱菜ちゃんも、家こっちの方なの?」

「それはごめん。俺もわかんない」

「あたしも」

「…そっか。…兄ちゃん待ってるし、わたしそろそろ行かないと…。それじゃ帰るね」

「麗美、また明日ゆっくり話そうっ」

「うん。また明日」

「気をつけて帰れよ!」

「うん、じゃあね」



 わたしは二人に手を振ると、歩き出してスーパーの駐車場から出た。


 どうして萩原くんと朱菜ちゃんはスーパーに居たのだろう。彼女がこっちに遊びに来たのだろうか。



 ――あれ? でも、食材買ってたし…。

 やっぱり、地元が一緒だっていう可能性も、…なくはない。



「……」



 もうこれ以上考えるのはやめよう。いくら考えたって仕方のないことだ。


 わたしは、頭からその思考を無理やり打ち消した。



***



 玄関を見ると、優希さんのスニーカーが綺麗に揃えた状態で置いてあった。それを確認し、わたしはそのままリビングへ向かう。


 リビングには、誰もいなかった。宿題をすると言っていたから、おそらく、兄ちゃんと優希さんは二階の部屋にいるのだと思う。


 わたしは、先ほど買い物したビニール袋を探した。だが、どこにも見当たらない。


 不意に台所の方に視線を向けると、台の上に、カレーの箱と野菜が綺麗に並べてあった。きっと、優希さんがやってくれたのだろう。兄ちゃんは絶対こんなことしてくれない。


 ――お礼にお茶でも持って行ってあげよう。そう思い立って、わたしはさっそくお茶を淹れる準備に取り掛かった。


 お茶を淹れている途中、階段を下りる音が耳に入る。足音は一人だけのようだった。


 兄ちゃんだろうか。それとも優希さんなのだろうか。


 どちらだろうと気にしながら、わたしは扉に視線を巡らせた。



「おう。おかえり」



 …なーんだ。兄ちゃんか。



「ただいま」

「お前、優希に荷物だけ持たせて寄り道したな? 一人でフラフラして何やってたんだ」

「……ごめん、兄ちゃん」

「まあ、あまり遅くならなかったからいいけど」



 そう言って、兄ちゃんはさり気なく台所に入って来た。腕を組みながらわたしの手元をじっと覗き込んでくる。



「…あの、これ、お茶淹れたの。優希さんと兄ちゃんの分」

「サンキュ。今淹れようと思ってたからな。俺が持ってくわ、これ」
< 38 / 199 >

この作品をシェア

pagetop