Sweet Love
「ごめん、ごめん」



 笑いすぎのせいか、彼の目尻には涙が薄っすらと滲んでいた。



「萩原くん、わたしバスだから」



 なんだかんだと話しているうちに、いつもの停留所に着いてしまった。予定の時刻より早く到着したのか、バスはもう既に停車している。学生と一般乗客が数人見えるほどで、いつもよりは混雑していないようだった。



「俺もバス乗る。地元一緒みたいだし」

「あ、そっか…スーパーで会ったもんね」



 わたし達はバスに乗る。わたしは、この日初めて萩原くんと一緒にバスに乗った。


 バスに乗車してから、一番後ろの広い座席に向かう。わたしは窓側に座り、萩原くんはその横に座った。そのあと、間もなくバスが走り出す。ゆっくりとした低速度で坂を下り始めた。



「丁度よかったみたいだな、バス乗る時間」

「…うん」



 後ろの座席では、思ったよりも揺れていた。小刻みな振動に、二人の肩が触れ合う度にドキドキしながら、わたしは窓の向こう側の景色を見つめた。
< 48 / 199 >

この作品をシェア

pagetop