Sweet Love
 あれから何分経ったのだろうか。時間の流れがとても長く感じた。


 やがて、朱菜ちゃんは気が済んだのか、わたしから離れた。



「あんたってほんとムカつく」



 彼女は置いてあったわたしの鞄を手に持ち、わたしに目掛けて力強く投げ捨ててきた。



「……っ」



 痛すぎて、声も出ない。反射的に腕で顔を守ったが、虚しくも鞄は頭に直撃してしまった。


 鞄の中には、沢山の教科書や数冊のノートが入っている。相当な重量のはずだ。それが頭に当たり、一瞬ぐにゃりと眩暈を起こす。


 わたしの様子を見た朱菜ちゃんは、走って図書室から去って行った。ここまでやってしまったわたしを見て、彼女はきっと怖くなって逃げ出したのだろう。わたしはしばらくその場から動けずにいた。



「痛い…痛いよ…っ」



 わたしは、床に蹲りながら泣き叫んだ。


 恐怖心から解放され、安心したのかも知れない。涙が止まらなかった。恐くて抵抗できなかった。動けなかった。


 涙を流し続けていると、急に携帯の着信音が鳴り響いた。わたしはブレザーのポケットに手を忍ばせる。取り出すと、着信の相手を確認した。


 相手は、裕子からの着信だった。
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