Sweet Love
 わたしは通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。



「…もしもし」

『もしもし、麗美? 今どこにいる?』

「まだ学校…」

『なんか声が変だよ? 何かあったの?』

「……っ裕子ぉー」



 再び涙腺が緩んでしまい、涙が止まらなかった。泣きすぎて、もう呼吸が上手くできない。ちゃんと喋れない。



『…待ってて。今あたしが迎えに行くから。今、牧原も一緒にいるんだけど大丈夫?』

「…うん」

『今学校のどこにいる?』

「図書室にいるよ…」

『わかった。一五分ぐらいでそっちに着くと思うから。そのまま待ってて』

「うん…」



 通話終了後、呼吸を整えるために、大きく息を吸いこみ吐いたりを何度か繰り返しす。繰り返していく内に、少しだけ楽になった気がした。



 ――ティッシュ…欲しい。



 わたしは、近くに投げ捨てられた鞄を開け、ポケットティッシュを取り出して鼻をかむ。


 頬の痛みはまだ残っていた。どうやら熱を持っているようで、触ると熱い。


 朱菜ちゃんは萩原くんの彼女であって。決して、別れたわけではない。今はただ、少し距離を置いているだけだ。


 考えてみれば、いつも萩原くんの近くにいたのは、わたしの方だったのかも知れない。自分のせいで、わたしが彼女の居場所を、知らない内に奪ってしまっていたんだ。
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