Sweet Love
 四人と聞いて、わたしはホッと胸を撫で下ろす。



「…うん。じゃあ行こうかな。…行くっ」

『そしたら、明日待ち合わせしようか。…俺、石田がいつも乗ってるバス停の前に行くから一〇時に来てくれる?』

「うん、行けるよ」

『じゃ、一〇時には着くようにして。…あ、そう言えば腹治った?』

「うん。帰る頃にはもう大分…」

『そっか。大したことなくて良かった。今日はもう遅いから、早く寝た方がいい』

「そ、そうだよね、もう寝なきゃ」

『うん。じゃ、また明日』

「…うん、じゃあ明日ね」



 通話を終え、緊張から開放されると、同時に長い息を吐き出した。携帯を握っていた手には、まだ汗を握っている。



 ――どうしよう、明日、…お出掛けだ…。



 二人きりではないけれど、休日に会うのは初めてだ。



 ――明日、四人でどこに行くんだろう。でも、楽しみ…かも。



「早く寝なきゃね…」



 明日のために目覚まし時計をきちんとセットし、わたしはお布団に潜り込んだ。



***



 翌日、午前九時五五分頃、わたしは自宅から最寄の停留所に到着した。バス停の木製のベンチには萩原くんが座っている。


 わたしに気付いた彼はすっくと立ち上がり、こちらに向かって軽く手を上げた。わたしは、それに応えるよう控えめに手を上げる。


 予定の時間より五分早く着いたはずなのに、彼はわたしよりも先に着いていた。もしや、かなり待たせてしまったのではないかと、不安になる。



「おはよう。ごめんね、…待った?」

「いや、さっき着いたばかりだよ。バス、一分のバスあるからそれに乗ろうか」

「うん」



 それから五分ほど経ってバスがやってくると、わたし達は一緒に乗り込んだ。一番後ろの座席が丁度埋まっていたので、今回は二人用の座席に座った。


 萩原くんの話によると、わたし達はこのまま街の方まで移動し、裕子達と現地で合流したあと、四人で映画を観に行くことになっているらしい。


 どうやら、裕子が大のホラー映画好きらしく、今日から公開されるその映画が目当てなんだとか。


 わたしは、怖いのがどうも苦手だ。オバケとか幽霊とかは絶対見たくない。加えるなら、妖怪もだ。実際には、まだ見たことがないんだけれど。


 と言っても、少しばかし今日観る映画については、興味があった。
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