Sweet Love
***



「僕もお手伝いしますよ、お母さん」

「いいの、いいの、優希くんは! ゆっくり座って待ってて」

「……優希さん、大丈夫です。わたしがやるんで、あっちで兄ちゃんと待ってて下さい」

「でも今日は麗美ちゃんのお祝いだよ。僕も何か手伝うよ」

「……すいません」



 というわけで現在我が家では、わたしの入学祝いのため、忙しくごちそうの準備をしていた。



 それにしても兄ちゃんは、ずっと居間でテレビ見てるし……。

 のんびりしすぎだよ、兄ちゃんったら…。

 少しは優希さんを見習って欲しい。



「麗美ちゃん、向こうで待っていてもいいよ。麗美ちゃんのためのお祝いなんだから」

「で、でも……」

「お野菜切るの手伝ってくれたしもういいわよ、麗美。あっちで休んでなさい」

「……はーい」



 わたしは俯きながら渋々居間に戻った。


 テレビの画面に視線を巡らせると、何やらものまね番組が放送されていた。兄ちゃんはテレビを見つめながら「お、似てる」と、感心したように呟いている。


 わたしは冷めた視線を兄ちゃんに送った。でも兄ちゃんはわたしの視線に気付いていない。それがまた腹立たしくて、思わず溜め息をついた。



「……ね、兄ちゃん。兄ちゃんも少し手伝えば?」



 話し掛けると、兄ちゃんはこちらを一瞥してテレビに視線を戻す。



「俺、今日朝飯一人で作ったもん。だからいいの」



 ――そういう問題…?



「…それに母さんが今日はいいからってさっき言ってたし。……今、ものまね見てて目離せないし」

「……」



 呆れてものも言えなくなってしまったわたしは、ソファーに腰を落とした。
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