Sweet Love
「うわあー、なんか、…みんな変な顔」

「…初々しいな、ははっ」



 確かに――。改めてじっくり見ると、笑ってるのに表情が強張っている。過ごす時間が長くなれば、みんな自然体な笑顔になっているのだろうか? でも、見ていると温かくて微笑ましい。時が経てば、これも良い思い出になる。



「おっかしいな、これ。…バカっぽい顔してる」



 萩原くんは四人の映ってるプリクラを指差しながら、ふわりと微笑んだ。わたしには何だか、彼の顔が嬉しそうに見えた。



「ふふふ、…そうだね」



 わたしは、プリクラをそっと折れないよう長財布に仕舞った。


 プリクラを撮り終わったあと、UFOキャッチャーやメダルゲームで遊び尽くした。四人ともメダルは増えていく一方で、メダルを減らすのにかなりの時間は費やしていた。


 メダルを使い果たしたところでわたし達が外に出ると、空はいつの間にか茜色の夕焼けに染まっていた。



***



 途中で裕子達と別れたあと、わたしと萩原くんは再びバスに乗った。そしていつもの後部座席に並んで座る。最初は満員だったけれど、郊外に進むに連れ、乗客が大分減ってきた。


 わたしはふと隣の萩原くんに視線を巡らせた。バスの車窓から射し込んでくる夕日が、彼の肌をオレンジ色に照らしている。どこを見ているのかわからないけど、彼は真っ直ぐと前を向いていた。少し切なげに見える。その横顔があまりに綺麗だった。


 無意識的にか、バッグに入った携帯に手を伸ばしそうになって、ハッと我に返る。



 ――ああ、わたしは何考えてるのだろう。



 わたしは内心で自分を嘲笑いながら視線を落とした。



「今日は、…楽しかったね」

「うん」



 純粋に楽しかった。なんたって、牧原くんの知らない一面も見れたし。


 でも、どうしても彼の好きな相手が気になってしまう。訊いてみたいけど、訊く理由が思い付かない。



「…キャラメル食べる?」

「あ、うん。ありがと」



 彼の手からキャラメルを貰い、わたしはその場で口に含んだ。



「萩原くんって、キャラメル好きなの?」

「んー、…好きというか、今ハマってる。ていうか、甘いのは全般に好きかな」

「わ、わたしも。…甘いの好き」

「石田さっき、パンケーキめちゃくちゃがっついてたもんな」



 彼はにやりと意地悪な笑みを浮かべて、わたしを見た。
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