Sweet Love
 お目当てのバスグッズを見つけたわたしと兄ちゃんは、お会計の列に並んでいた。


 待っている間、不意に肩をトントンと軽く叩かれ、わたしは後ろに振り向く。



「良いもの見つかりました?」

「うん、バスグッズにしたの。…何も買わないの?」

「もう買いましたよ、わたし」



 彼女はそう言って、手提げの小さいサイズの紙袋をわたしの目の前に掲げた。



「…あ、本当だ。あや、あ…、花咲さんは何買ったの?」

「別に、下の名前で呼んでもいいですよ」



 朱菜ちゃんはクスッと笑った。



「じゃあ…」



 わたしは照れ笑いを隠しながら、紙袋に視線を移した。



「あ、買ったのはコレです」



 そう言って朱菜ちゃんは、紙袋を少し開いてわたしに見せた。


 紙袋の中を覗き込むと、カラフルなパステルカラーの花柄が目に入った。



「これは?」

「ポーチですよ。花柄が可愛いでしょう?」

「か、可愛い…」



 …朱菜ちゃんってセンスいい。



 何だか自分と朱菜ちゃんが今こうして話してるのが本当に不思議だ。前の自分だったら、こんな風に朱菜ちゃんと話すことなんてないと思っていた。



「ん。会計」

「あ、うん。ごめん」



 わたしは、既にレジ前に立っていた兄ちゃんの方に慌てて駆け寄った。



 ――いつか、萩原くんに“好き”っていうこの気持ちを伝えたい。


 いつこの気持ちを伝えられるのか、それはこの先まだわからないけれど…でも。


 いつか、いつか、ちゃんと伝えたい。
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