俺のだ、って言っちゃうよ?
車で30分も走っただろうか。
静かな住宅街の一角。
コインパーキングに車を入れると外に出た。
「この辺りですか?」
「うん。古民家を改装した、少し奥まった場所なんだけど」
案内されるままに着いていく。
小さな店の並ぶわずかな隙間に道がある。
確かに、路地の奥で初めてなら迷いそうな立地だ。
木の看板に、[natural kitchen]と書いてある。
「すみません。待ちましたか?」
入り口で入ろうとした女性の背中に声を掛ける匡次さん。
「いえ、今来たところ…。早かったわね」
スリムな体型、肩までのストレートボブの、私より少し若そうな、フリルブラウスにタイトスカート。
「その人?」
「あっ、はい」
「か、環月佐那と申します。初めまして」
思わず顔がこわばる。
「よろしく。朝菜です。詳しいお話は中で」