浅葱の贖罪
「そうですか。葉月さんなら、仕事が早く、丁寧なので、安心だったのですが…」

久坂玄瑞の本当に落ち込んでいる顔を見ると、心が傷んだ。

しかし、今の私には新選組と敵対する者の子をとりあげるなど、到底出来なかった。

そして、8月18日の政変で京を追われたはずの久坂玄瑞が偽名も使わずに、
のうのうとまるで、新選組をばかにしているかのように、京の街を動き回っているのが、許せなかった。

「すみません。私の経験が浅いばかりに…。」
私はそう言い、久坂玄瑞を診療所の前で、見送った。

彼は、礼儀正しいようで、私に一度頭を下げてから、診療所を出ていった。



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