浅葱の贖罪
葉月が簪(かんざし)を気に入ってくれたことは、素直に嬉しかった。

「あぁ。」

私も、歩みを止め、彼女にあげたばかりの簪(かんざし)を再び受け取る。

少しばかりであったが、彼女の手に触れ、彼女の熱が私に伝わり、とても、心地が良かった。



「…少し、恥ずかしいですね。」

彼女はそう言い、うつむいた。

私は、どうしようもなく、彼女に触れたかった。

私が簪(かんざし)をつけてやる手を止めると、彼女は私を見上げた。


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