君がいたから~私が決めたこと~


2学期の始業式の日。



「えっと、これとこれと...」

自分で行くと決めてchatに宣言したからには、行くしかない。
本当は怖い。行くのが嫌で飛び降りようとしたから。

「はぁ...。」

思わずため息。
視線を制服へ移して久しぶりに手に取る。

私の学校は夏服と冬服で制服が異なる。
手に持っているこれは、クリーム色でセーラー風のブラウスに紺色のスカート。白指定の靴下。

ちなみに冬は紺の上に水色と白の線が横に入っているスカート。
靴下は指定の紺色か黒で、上に着るブレザーは紺。

紺で統一はされているけれど、あまり地味では無い感じの制服。


私はクリーム色のブラウスに腕を通し、スカートをはく。
一旦椅子に座って靴下を履く。

この作業ですらだるい。


「ため息ばっかは幸せが逃げる...。」

リュックに筆箱とファイルだけ詰めて、部屋を出る。
私の部屋は玄関から1番近い部屋だから、親に会わずに家を出ることが出来るはず...なのに

「まだいたの。」
「...お母さん。」

たまたまトイレから出てきた母親と会う。

「吐き気がする...早く行けば?顔見るとほんと腹立つ。」
「...。」
「行けよ。」

まただ。吐き気がする。
手を挙げられるのが怖くて、何も言えない。
でも、足も動かない。

ただただ、怖い。

「行けっつってんだろ!」

そして、手を振り挙げるところを見て私は勢いよく目を閉じる。
そして思うんだ。

あぁ、また叩かれる。


パシンッ!

朝のまだ蒸し暑い季節。
玄関で、私は座り込んだ。
頬に痛みを感じるまでの時間が長い。

涙すらもはや出ない。

「あんたがいけないんだよ。」

その言葉に、
私がいけないんだなって、そう思い込みそうになる。
私は悪くない。何もしてないはず...。
なのに、なのに。

赤くなったであろう私の頬に手を当て、俯く。

「早く消えろ。」

怒りがふつふつとわいてきて、玄関に置いてある花瓶が目に入る。
耐えろ、私。耐えろ。
頬を叩かれただけ。まだマシだ。
余計なことは考えるな。

そして耐えた瞬間また思う。
あの時怒って花瓶を手にしていたら...。
手にしていなかったとしても、声を出していたら私はまた...
そう考えると、再び恐怖が現れる。

「今日、行くのやめようかな...。」

もう、既にくたびれた。
疲れた。


でも、chatに宣言した。
行かなきゃ...。
その事だけが私を動かす。

そして私は立って念のために言う。

「...行ってきます。」

そして玄関のドアを開けた。


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