君がいたから~私が決めたこと~



考えてみればわかる。
乗ればふたりきり。


「...」
「...」
沈黙だけ。

4分の1のところまで来てchatが口を開いた。

「慣生は生きるってどういうことだと思う?」
「生きる?」
「そう。生きる」
「う~ん」
「慣生の事だから考えたことないでしょ?」
何も言えない。
死ぬことなら山ほど考えた。
chatに出会う前の私には死しか無かったから。
だけど...

「そうだけど昔、お母さんが優しくて家族が仲良しだった時に言ってたんだけど」
「どんなこと?」
「私の名前。変な感じの組み合わせだけど、ちゃんと意味があるんだって。」
今は私と滅多に話さないお母さんが教えてくれたこと。

『慣生の名前はなんで難しいの?』
私が小学生だった頃。自分の名前が嫌いだった時。
みんなの名前は可愛いのになんで私の名前はこんなに難しいんだろうって幼き心で考えた。

考えてもわからないから、お母さんに聞いた。

『お母さん!』
『どうしたの?慣生』
『なんで慣生の名前は難しいの?』
『慣生の漢字はお母さんとお父さんが決めた大切な名前なのよ』
『?』
『う~ん。慣生の漢字は慣れるっていう字に生きるって書くでしょ??』
『うん』

私には理解出来なかった。
幼すぎたし、高校3年生の今だって理解はできるけどできない。


「お母さんから、『慣生には、生きるって言うことに慣れないでほしくてその名前をつけた』って言われたの」
「そっか...お母さん、慣生のこと大切なんだね」
「それは無いよ。今なんかほとんど喋らないし」
「それはそれ。慣生のお母さんが考えてる事はお母さんにしか分からないよ」
「...かもしれないね」
chatには多分言葉で勝てない。

「僕はね、生きるってことを死ぬほど考えてきた。もちろん死ぬってことも」
きっとこれだったんだ。
高所恐怖症でも私が乗らないといけなかった理由。

「慣生と出会った日。僕は星を見て死ぬということを考えてたんだ」
「なんで、考えてたの...?」
「ちゃんと質問してきたね、いいよ。僕もちゃんと話すから」





< 9 / 16 >

この作品をシェア

pagetop