ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく





東和田市の街外れにある俺の家。ガラス張りの大きな窓に吹き抜けの高い天井。シアタールームや地下にはワインセラーもあって一般的にはとても裕福な家庭に育った。

親父の職業は医者。地方から評判を聞きつけて受診するほどその腕は確かで、総合病院の脳外科医をしている。

母さんの職業は教師。頭のいい私立の女子高で音楽を教えていて、母さんが弾くピアノが小さい頃からの子守唄だった。


『世那、おやつの時間よー!』

休日になると決まってリビングには揚げドーナツの匂いがする。粉砂糖をたっぷりかけて熱々のドーナツにかぶりつく瞬間は至福のときだった。

そして食べ終わったあとは親父の膝の上で本を読んでもらう。外国のとても難しい本で内容は理解できなかったけど、それでも楽しかった。

そんな幸せな時間は幼稚園まで。

小学校に入ると英才教育と呼べるほど立派なものじゃないけど、習い事や将来に役立つとされるものはなんでも習わされた。

最初の頃はどれも楽しくて、上手くできた時や良い結果がでた時は本当に嬉しかった。なりより俺は両親に褒められたかった。
< 105 / 152 >

この作品をシェア

pagetop