ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
裕福な家庭、恵まれた環境。
欲しいものは言えばなんでも買ってもらえた。
だけど欲しくないものも俺の周りには溢れている。
好きでもないのに買い与え続けられている難しい本。読んだ感想を聞かれるからすべて目を通しているけど、面白いと思ったことは一度もない。
前に学校の教室に置きっぱなしになっていた漫画を読んだ時は続きが気になって仕方なかったのに。
それでも漫画なんて見つかったらまた怒られるし、必要ないものだと捨てられるだけだから自分では買わなかった。
そんな日々が続いて俺は中学生になった。
周りの男子の成長期が遅い中、俺の身長はすでに
170センチ近くあって、その見た目で小学校の時のようになめられることはなかった。
むしろ自分がなにかをしなくても人が寄ってくる。勉強以外の楽しさを覚えたのはこの頃からで、その日俺は初めて塾をサボった。
罪悪感はあった。むしろバレた時の恐怖を考えると体が震えるほどに。
同時に俺は気づいた。勉強は好きでやっていたわけでも、やりたくてやっていたわけでもなくて。両親に強いられて押し付けられながら狭い檻の中に閉じ込められてたということに。