ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
友達とファーストフード店に入ってハンバーガーを食べて、そのあと公園でひたすらバカな話をする。
なんて、自由なんだろうと感動した。
結局その日の塾のことは両親にはバレなかった。勉強してきたふりをして復習をするからとすぐに部屋へと行って、内緒で借りてきた漫画を読んだ。
新しい世界。今まで我慢してきたことが溢れ出す感覚。
だけどそれでも親父の厳しさは変わらない。毎日毎日新しい本を持ってきて、難しい参考書や問題集が部屋に増えていく。
『勉強頑張ってる?』
夜中に母さんは差し入れを持ってくる。集中力が高まるからと決まって持ってくるのは糖分があるあの手作りのドーナツ。
昔は好きだった。好物でもあった。
だけど今はその匂いを嗅いだだけで胃もたれするほど苦手なものへと変わっていた。やりたくもないのにやらなきゃいけない状況。
こんな問題集より、早く漫画の続きが読みたいのに。
『世那は誰よりも賢いから将来はお父さんみたいなお医者さんになれるわよ』
ニコリと笑う母さんに俺はどんな顔をして返事をしたかは分からない。少なからず作り笑顔だけは浮かべていたと思う。