ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

そんな家でのストレスを発散するように次の日もまた次の日も塾を無断で休んだ。

あんなに孤独だったのに外で勉強をしなくなってから俺は毎日友達に囲まれて、誰からも避けられていない。

あの日々は俺のせいじゃなくて、勉強のせいだったんだと気づいた。だけど塾を休んで3日目。
とうとう家に連絡がいって俺は初めて親父に殴られた。


『お前はなにをしてるんだ……っ!』

右に体が傾いた。ジンジンと痛む頬。口の中から鉄の味がした。


『塾を休んでなにをしていたか言いなさい!』

『……友達と遊んでた』

『友達?学校のか?』

こくりと正直に頷くと、親父は吐き捨てるように言った。


『友達なんて下らない。そんな時間があるなら、一冊でも多く本を読みなさい』

何故だろうか。今まで我慢に我慢を重ねてきて、腹が立つこともあったけど反抗心はまだ芽生えていなかった。

勉強は嫌いだけど、それでも褒められることは嬉しくて両親の喜ぶ顔を見たいって気持ちは頭の片隅にはあった。

だけど今の言葉で……それがプツリと切れてしまった。

下らないかもしれない。友達は将来に役立たないかもしれない。それでもみんなのはしゃぐ声を窓越しに聞きながら、読みたくもない本をめくって涙したことを親父は知らない。
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