ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
たまに鏡で自分の顔を見ると俺はこんな顔だったかな、と足を止める時がある。
目付きも口調も人格さえも変わった。真面目に両親の敷いたレールの上を歩いてきた俺にとって今は道しるべがなにもない。
頭だけは賢いくせに自分でもビックリするほど不安定で。だからネジが外れたように悪いことは散々やった。
学校の窓ガラスを割って、商店街をバイクで暴走して。弱いターゲットを見つけてそいつから金を脅し取ったこともある。
仲間と集まれば周りの人は引いていって道を開けた。まるで殿様気分だった。
強い立場にいるということ。誰かから恐れられるということはなんて快感なんだろうと思ったぐらい。
だけど心は何故か満たされはしなかった。
友達の家を転々として、着替えを取りに久しぶりに家に帰った日のこと。母さんは俺を見るなり声を上げて泣いた。
『……世那!どうしてそんな風になっちゃったの?お願い事だから家に帰ってきて。私は心配で心配で……』
『心配?世間体が、じゃなくて?』
なんてひどいヤツなんだって自分でも思った。
でも後戻りできないくらい俺の心は荒んでいる。
すぐに着替えを持って出ていこうとしたのに母さんがずっと俺に泣きついて離れなくて。そんなことをしてる間に親父が家に帰ってきてしまった。