ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
『もしかして世那も……家族のことで悩んでたりする?』
ドキッとした。それが悟られないように俺は安田を静かに見た。
『なんか世那は私と同じ匂いがするっていうか……。家に帰らないのもそうなんじゃないかなって』
『勝手なこと言ってんじゃねーよ』
『はは。ごめん。でも私はそうなんだ。家に帰りたくないのは家族のせいっていうか、それが原因で帰れないんだよね』
安田はとても寂しげな瞳をして、その視線を外灯に群がる虫たちに向けた。
『見て、これ』
安田はそう言ってTシャツの襟元を下げた。ふいに見えてしまった下着の肩紐。だけど顔を反らさなかったのは下心からじゃない。
安田の胸元には痛々しい青あざ。他にもお腹や背中に無数の痕があって、安田はゆっくりと服を元どおりにした。
『私、お母さんの再婚相手に殴られてるの。見えない箇所を狙って蹴られたり。たぶんお母さんは知ってる。だけどそれを見てみないふりをするんだ』
『………』
『きっと私よりその人を失いたくないんだろうね』