ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
公園に響く仲間たちの声がやけに遠く感じていた。安田はすぐに空気を変えるように笑顔になって言葉の続きを言う。
『でも私、高校は家を出て寮生活ができるところを探すつもりでいるし、それまでの辛抱なんだけど』
先のことを考えている安田が少し羨ましく思えた。俺にはなにもない。ただ今さえ良ければいいって、そんな足場の悪い吊り橋の上に立ってるだけ。
『世那は?世那はなにに悩んでるの?』
空気が変わった気がした。
安田の話を聞いてしまった手前、悩みなんてないと突き放せない雰囲気だ。
……俺の悩み?俺はただ……。
『俺はただあの家をめちゃくちゃにしてやりたいだけだ』
なんでも揃っていて、なんでも手に入れたようなような錯覚がするあの家。裕福で恵まれているけど、なにか大切なものが欠けている家族。
人から羨まれるような人生を送らなくても、それは惨めでも不幸なことでもなくて。
平凡で普通な、ただの家族がほしかっただけだ。