ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
……話し合う?どうせそう言って俺を今度こそ監禁するつもりかもしれない。
そんなことを思いながらも俺の足は自宅へと向かっていた。両親に言われたからじゃない。単純にまた着替えを取りに行くだけ。
どうせ昼間はどっちも仕事だし、鉢合わせになることはない。家へと続く坂道の途中で花の香りが鼻を通りすぎた。
恐らくうちの庭からだ。俺がいない間にも変わらずに綺麗に咲く花たちが今はなんだか憎らしく思えてくる。
家に入るとやっぱり誰もいなかった。
几帳面な母さんは必ず朝の掃除をしてから仕事に出掛ける。だから家の中はゴミひとつ落ちていない。
高級ソファーに大きな50インチのテレビ。知り合いの建築家に一から設計してもらったこだわりの暖炉。
昔はこの暖炉でよく冬を過ごしていたっけ。だけど煙突から出る煙のせいで庭の花が枯れると言って数年前から一切使わなくなった。
……あ、そういえば一度だけ両親が珍しく慌てていた時があった気がする。それは前に俺が暖炉の火を勝手に付けて、家中が煙だらけになった時だ。