ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく

「俺、力を持ってたのが羽柴で良かったって思うよ」

詩月がふいに歩く足を止めた。

いつもそうだ。いつだって詩月はまっすぐに私を見る。まだその強さを手に入れていない私はやっぱり可愛げのないことを言ってしまう。


「そんなこと言って詩月は私以外の人でも記憶を探してほしいって頼んだと思うよ」

「だとしても俺は羽柴だったから救われた。俺はずっと自分が何者で、どんなヤツだったかも分からなくて……。詩月世那っていう名前だけを付けた存在だったから」


――『なあ、羽柴って俺の名前知ってる?』

不確かだった。ふわふわと浮いているみたいに。


「羽柴が俺を見つけてくれた。本当に本当にありがとう」

夏は姿を隠して、どこからか秋の匂いが風にのってきた。

季節は変わる。きみも変わる。

私は?

私は……変われる?
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