ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
「……羽柴!」
教室移動の廊下で詩月に声をかけられた。そんなに堂々と私に声をかけてまた噂が流れても知らないよ。
詩月は人気者なんだから。
「考えてみたら俺、羽柴には色々してもらったのに全然なにもしてないよな」
詩月はそう言って眉毛を下げた。
詩月だから打ち明けられた悩み。それはまだなにひとつ解決していない。だけど……。
「なにもしなくていいよ」
「え?」
「私も探し物を見つけてくるから」
うまく笑えたかどうかは分からない。でも口元は自然と上がった気がする。
詩月はなにか言いたそうに私を見ていたけど、
そのまま歩く足を再開させた。
……少し突き放してるように見えただろうか。
でもごめんね。私はまだ詩月とは並べない。
詩月は私になにもしてないと言ったけど、それは絶対に違う。私も詩月に救われたことが何度もあった。
その傷跡に触れて、弱さも苦しさも知って。それでも立ち上がった詩月を見て私もこのままじゃダメだと思った。
――どうしたら強くなれますか?
〝ひとりじゃなくて、ふたりなら〟
そう、私に芽生えた強さは詩月が教えてくれた。
私も逃げずに向き合うよ。
どんな結末でも、どんなに汚くても。
それでもその先で私も今まで知らなかった自分に出逢いたい。