ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
私は教室に着いて自分の席に座った。そういえば近々席替えをするって言ってた。
この窓をぼんやりと眺められる席も嫌いじゃなかったけど、不思議と名残惜しさはない。
「ねえ羽柴さん。英語のノート集めてるんだけど」
するとひとりのクラスメイトが私に近づいてきた。前はだれかの気配を感じるたびにビクビクとしていて、目を合わせるどころか声すらも出せずにいた。
「はい」
私は机からノートを取ってそれを差し出す。
「遅れてごめんね」
もう怯えなくても大丈夫だ。ありのままの自分を見せて、だれかのことを知ることも怖くない。
「え、ああ……うん」
私の声をはじめて聞いたって顔をしている。少し喋っただけなのに教室がざわめいて。私って今までどんな存在に思われてたんだろうか。
女子生徒は私のノートを受け取って友達の輪に戻ろうとしたけれど、なぜかその足はまた私の元へと帰ってきた。
「たまには向こうで一緒に喋らない?」
なにかが変わる。
小さなことで、こんなにも。
「うん!」
私は自分の席から離れて、ぎこちなくそれでもまず自分を知ってほしくて。はじめて教室でクラスメイトたちの中へと飛び込んだ。