ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
それから詩月とはたまにというか、ふいに目が合う時がある。なにかを言いたそうにして私に駆け寄ってこようとすると必ず邪魔が入る。
「詩月~!ちょっと来てよ!」
一度途切れてしまったタイミングは2回目3回目と続いて。私もそれなりに話しかけようと試みているけれど、ひとりぼっちじゃなくなったせいでそれも失敗。
「羽柴さん、このお菓子美味しいよ!」
とても近くて同じ空間にいるはずなのに詩月に近づけない。
考えてみれば、私と詩月は一体どういう関係だと言えばいいんだろうか。だって私たちは元々友達だったわけじゃない。
同級生でクラスメイトで、その他大勢の中のひとり。そんな私と詩月を繋いでいたのは残留思念という不思議な力があったから。
詩月の記憶が戻って空白の時間を取り戻して。
そして私自身もずっと悩んでいたことを乗り越えることができた。
だから思ってしまう。
私と詩月を繋ぐものはなくなってしまったんじゃないかって。一緒にいる必要はない。もう秘密ごとも、隠しごとも、ふたりで共有しているものはなにもないのだ。