ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
私はお母さんが作ってくれたお弁当を食べながら、スピーカーの声を聞いていた。
今日は自分の相談が読まれるかも、なんてみんなが期待に胸を膨らませている中で流れてきた声。
『いつもだったらここで相談用紙を読むんですが、今日は俺の話を聞いてください』
ピタリと箸が止まる。それは私だけじゃない。
ざわざわとする教室。だけどそれを知らない詩月は放送を続けた。
『俺はずっと自分探しをしてました。自分のことが分からなくて、ずっとずっと知りたくて。そんな時にひとりの女の子に出逢いました』
ドキッと心臓が跳ねる。
だけどみんな詩月の話に耳を傾けていて、私の動揺には気づかない。
『俺から見たその子はなにか抱えているくせに周りと関わることを避けてずっと窓の外ばかりを見てた。だけど背筋はいつもピンッとしてて逆境に負けないその後ろ姿がすげーカッコよくて……ちょっと憧れてた』
「………」
『だけど一緒に過ごして、きみも俺と同じですげー弱いヤツで。うつ向いたり泣いたりしないんじゃなくて、それができる場所がなかっただけなんだって』
「………」
『もし過去と向き合って本当の自分を見つけて。自分探しで繋がっていた関係が切れたら俺が泣ける場所になろうって』
「………」
『そういう存在になれねーかなって言おうと思ってた』
なんでだろう。甘い卵焼きを食べたはずなのにしょっぱい味がする。