ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
私たちの間に僅か沈黙が流れた。
私はずっとカメレオンみたいに表情が変わる詩月を見ていた。よく疲れないなあ、胡散臭いなあと思いながら、私は毎日毎日同じ顔。
それなのに詩月に会って、色々なことを知って、きみの傷跡に触れて、自分の傷跡とも向き合って。
いま自分がどんな顔をしているのか。
冷静に平常心を保てているだろうか。詩月の瞳に映る私はとても知らない顔をしていて、まだ心臓がうるさい。
「詩月。私、力がなくなった」
「うん」
「……だから……」
だからきみに触れてもいい理由がなくなった。
もう力はない。
触れなければきみの気持ちは分からない。
だけど、だけど……。
「羽柴。俺の気持ち分かる?」
詩月がゆっくりと私に近づいた。
どうしてだろう。見つめあっただけで同じ鼓動の音がする。
詩月がニコリと笑って、私の目から溢れた涙を優しく拭った。
「俺、羽柴が好きだ」
力がなくても伝わってくる気持ち。
たくさん話そう。飽きるまで、尽きるまで。
これからのことをきみと話したい。
だけど、今はこの想いから。
「うん。私も。私も詩月が好き」
弱虫だった私たちの手がゆっくりと重なる。
世界は綺麗なものばかりじゃない。
だけど、それでも。傷ついた心ごと好きだと思えたのは綺麗じゃないけど涙がでるほど愛しいこの世界。
越えていく。過去の自分を。
見つけていく、今日からまた新しい自分も。
この場所から、きみとこれから。
たくさんの幸せを見つけに一緒に生きていこう。
――【きみまであと、どのくらい。 END】