ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
ガヤガヤとうるさい廊下を通りすぎて屋上までの階段。憂鬱すぎて足に鉛が付いてるかのように重たい。
ガチャッとドアを開けると生暖かい風が頬をかすめた。
「お、きたきた」
すでに屋上で待っていた詩月と目が合った。私は仕方ないから来てやった、みたいな顔を露骨にしてるのに詩月はなんだか嬉しそう。
「それにしても暑いな。ここで昼寝したら真っ黒になりそうじゃね?」
「………」
直射日光が直撃しているコンクリートはまるで目玉焼きが作れそうなほどジリジリとしていた。私は建物の影になっている部分にいて太陽の下には出なかった。
「呼び出したのは詩月なんだから、私に話したいことがあるならさっさとしてくれない?」
べつに屋上じゃなくても人気がない場所はいくらでもあったのに。暑いのは苦手だし、肌が焼けるのも嫌だ。
詩月は苦笑いで顔をポリポリと掻いたあと、静かに話はじめた。
「実は俺14歳までの記憶がなくてさ。だから今日までの2年間の出来事しか頭の中にないんだよね」
ふわりと、詩月の髪の毛が揺れる。