ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
「お待たせ。ばあちゃんが普段使ってたものとか色々持ってきたんだけど……」
詩月は手鏡につげ櫛(くし)。そして綺麗なブローチにおばあちゃんが羽織っていたカーディガンを持ってきた。
こんな風にテーブルに並べられるとヘンな感じがするけど、私は最初に手鏡に触れた。
そこから流れてきた光景は薄紅色の口紅を塗るおばあちゃんの姿。身だしなみには相当気をつけていたみたいで櫛から読み取れたのも同じようなことだった。
「……どう?」
「記憶に繋がりそうなことはなにも」
「じゃ、ブローチとカーディガンは?」
詩月に言われてそれにも触れたけど普段のおばあちゃんの姿が見えるだけで、強い思いや重要なことはやっぱりなにも分からなかった。
詩月にそれを伝えると残念そうな顔をしながら頭を悩ませている。
「他にばあちゃんが愛用してたものってなんだっけ……。まさか羽柴にこんな力があると思ってなかったからあんまり注意深く見てなかった」
「………」
改めてこうして学校以外の場所で詩月といるなんて不思議な気分。しかも詩月の家だなんて、数日前の私が知ったら呆れられそうなほど急展開だ。
詩月はそのあとも「うーん」と頭を抱えていたけど、私は相変わらず落ち着かない。広すぎる家と整理整頓されすぎて生活感がない部屋。
詩月がここに住んでるとは思えないぐらい。