ひとりぼっちの夜は、君と明日を探しにいく
女性から感じたのはお母さん、つまりおばあちゃんに対しての苛立ちの感情。
ふと、手元を見るとテーブルに深いキズが付いていて。どうやらそれに触れたことで今の思念が読み取れたらしい。
きっとこれはコップが割れた時についたものだ。
おばあちゃんをお母さんと呼んでいたから、もしかして詩月のお母さん……?人から読み取れる思念は本人の視線だから顔は確認することができなかったけど……。
「ねえ、詩月のお母さんの名前って美恵子?」
「……さあ。名前すら聞いちゃいけない雰囲気だったから……。なんで?もしかしてなにか見えたの?」
「少し……ね。でもおばあちゃんとお母さんが喧嘩してるだけだったから、そこまで大きなことじゃないよ」
「喧嘩か……」
ふたりが言っていた〝あの子〟とは詩月のことだろうか?
でも兄弟がいたかもしれないし、事情が分からないから話してる内容もあまり理解できなかったけど。
教育とか厳しい家庭とか言ってたし、詩月の記憶に繋がることかもしれないけど、なにも確信がないから今はまだ黙っておくことにした。
私も一応、学んでるから。
ありのままを言ったら混乱させてしまうし期待だって増す。詩月のためじゃない。
私は自分が責められたくないだけ。